2009年01月31日
地球環境の主役 植物の世界を理解する⑨ 被子植物・胎内受精の完成
前回は、種子植物(種のできる植物)の繁栄が何故起こったのかを扱いました。
三畳紀(約2億5千万年前)の大陸乾燥に対処するために、繁殖形式を『胞子繁殖』から『種子繁殖』に切り替えたのが、種子植物でした。
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今回は、被子植物です。
被子植物は、花が咲き、実がなる植物です。
写真は福寿草(別名:元旦花といい、1月の花です)
写真出典:花ミュージアムさん
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『花』と『実』が登場しましたが、花と実は、器官としてみた場合は、何でしょうか?
そうです。『生殖器官』です。
被子植物では、『生殖』『生殖過程』がどうも重要そうですね。
生物・生命体は、二つの局面で外圧を受けます。
一つは、成長過程での外圧、幼体から成体になる成長過程に係る外圧です。
植物の場合は、自然外圧(例えば:光の取りあい)、動物の捕食圧力(それへの防御機能)。
もう一つの局面は、生殖過程です。
生殖過程とは、精子(雄花の花粉)が卵子(雌花)に出会い、受精卵(植物では、胚)をつくり、次の世代を準備する過程です。
動物が陸上に上がった際、生殖過程は、胎内受精に転換します。
魚類は、卵と精子が海中に散布され、海の中で受精が行われます。
陸上では、海がありませんので、雄が雌と交尾し、雌の胎内で受精が行われます。胎内受精です。
これと同じように、陸上に上がった植物も、胎内受精を獲得する必要性があります。
陸上生物の必要構造である胎内受精を完成させたのが、今回取り上げる、被子植物です。
では、本論に入る前に、クリックを!
被子植物の獲得した機能(=適応した外圧)を見てみましょう。
1.受精器官=花を、高度化させた被子植物
被子植物の花(生殖器官)は、図にあるように、多くの部分と複雑な構造を持っています。

出典:植物のつくりとはたらき
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図によって、簡単に受精と実の成長過程をおってみます。
①花粉(雄の生殖子)が、めしべの柱頭に到達する。
②めしべの柱の中で、花粉管を胚珠まで伸ばし、その中を花粉(雄の生殖子)が移動する。
③花粉が、胚珠まで達すると、胚珠の中の卵子(雌の生殖子)と合体し、受精卵(胚)ができる。
④受精卵(胚)ができると、胚の周りを取り囲んでいる部分が、栄養豊かな『胚乳』に成長する。
⑤胚と胚乳の周りを、堅い皮(種皮)で覆う。
①~⑤で、被子植物の種(タネ)の完成です。但し、果物のように、種の周りを分厚い果肉が被っている植物もあります。
⑥胚珠の周りの『子房』が肥大化して、『果肉』をつくりあげる。果実の出来上がりです。
2.何故、被子植物は、受精器官・受精過程を高度化させたのか?
受精過程では、卵子(胚)と精子(花粉)が、細胞レベルで合体する必要があります。
細胞レベルの合体ですから、細胞レベルで獲得している全ての防御機能を一旦解除する必要があります。(例えば、植物細胞は、細胞壁という堅い殻をもっていますが、この堅い殻を解除します。)
生殖過程は、生命過程の中で、最も無防備な過程です。
この無防備な過程を、どう安定化させるのかという外圧がかかります。
被子植物では、花粉がめしべの柱頭に辿り着いた後は、全てが花の器官内(めしべの柱、子房、胚珠)で受精過程が進行します。
胎内受精そのものですね。
胎内受精ですので、受精に必要な湿潤な環境も用意できます。(陸上なので、胎外の乾燥状態では受精が安定化しません。)
また、めしべの柱は、同種の花粉だけが花粉管を伸ばすことができ、異種の花粉を排除する機能が備わっています。
また、雑菌の侵入に対する防御を行っています。
被子植物は、受精に必要な湿潤な状態を維持し、生殖過程を安定化させたのです。
被子植物の登場は、白亜紀(1億5000万年前)からです。白亜紀に至る数千万年をかけて、胎内受精の仕組みを獲得し、地上植物の主流になって行きます。
比較のために、裸子植物であるマツの花の図をのせておきます。

出典:同上
胚珠が露出しているのが分かりますね。露出下での受精ですので、安定性が劣ります。
3.栄養豊かな種子、果肉を素早くつくりあげる被子植物
胚(受精卵)は、季節が到来しますと、芽を出し、次の世代の植物になります。
胚(単細胞)が、芽(多細胞)になるためのは、沢山の栄養が必要です。
胚が芽になるための栄養分が、胚の周りにある『胚乳』です。
栄養分が多ければ多いほど、発芽が安定しますので、胚乳を沢山もつ傾向、種(タネ)が大きくなる傾向に進化します。
動物でも、卵が大きくなる傾向をもつのと同じですね。
裸子植物では、花粉が到着してから、受精卵(種)ができるまでに長時間かかります。マツでは1年間かかり、イチョウでは4ヶ月かかると言われています。
それに対して、被子植物では、花粉管が伸びると、一気に受精が進み、胚が完成します。
その後、素早く、胚乳を成長させ、果肉を肥大化させ、実を成熟させます。
受精と種子形成を素早く行う機能を獲得しましたので、1年草(1年で成長し、花を咲かせ実をつけ、本体は枯れてしまう草)が可能となりました。
そういえば、裸子植物は、全て、木の形態で草はありませんね。
4.栄養豊かな種子が、動物の生育圏を広げた
現在の地上植物の種数は、概ね以下の通りです。
| コケ植物 | 2万種 |
| シダ植物 | 1万種 |
| 裸子植物 | 850種 |
| 被子植物 | 25万種 |
25万種の被子植物には、地表性の草から、上空高く伸びる高木まで、あらゆる気候条件、土壌条件の元で、繁殖しています。
そして、栄養価の豊かな種子、或いは果肉に覆われた種子を必ずつけます。
この種子や果実は、動物の食物となりますね。
25万種の被子植物が、生産し散布する『種子』『果実』は、膨大な種類となります。
その膨大な種類の種子、果実を餌とする動物が、地球の隅々まで広がっていったのです。
被子植物の『生殖過程の高度化』があって、初めて、多種多様な地上性動物が生育圏を広げることができました。
被子植物の地上適応、進化努力の賜物です。被子植物に感謝です!
- by leonrosa
- at 19:36

comments
被子植物が圧倒的に種類が多い理由が分かりました。そういえば、普段私たちが口にしているのも、ほとんど被子植物ですね。でも、どうしてわざわざ人間や動物に食べられるような果実や種を作るんでしょうか。不思議ですね。
動物に比べて、種の拡散、遺伝子の変異促進を進めるのがずいぶん遅い感じですね。
そこが、動物と植物の適応戦略の違いでしょうか?
ザルにんじゃさん、コメントありがとう!
稲も麦も被子植物ですね。
植物は、太陽の光と土壌の水・栄養素への適応が、第一義的な課題です。
そして、地上の乾燥環境。
だから、動物が食べる事に対しの防御は、二次的なものだと考えられます。
だから、植物は、「動物に食べられるかどうかは、考えていない」とも言えます。
また、動物の方がずっと機能高度化に長けていますので、対動物の防御は、ほどほどにしているとも言えます。
匿名さん、コメントありがとう。
>動物に比べて、種の拡散、遺伝子の変異促進を進めるのがずいぶん遅い感じですね。
動物では、約5億5千万年前のカンブリア紀に、あらゆる動物形態が登場したと言われる様に、種の拡散と変異促進が起こっている。
それに対して、植物ではという事でしょうか?
>そこが、動物と植物の適応戦略の違いでしょうか?
植物と動物の生存基盤が、当然異なります。
植物は、基本的には、光、炭酸ガス、水、栄養素の存在状態が、外圧の主軸です。『自然外圧』です。
その意味では、太陽光が豊富で、炭酸ガス濃度も濃い地上が、植物進化のゆりかごです。
それに対して、動物では、捕食・被補足という『種間圧力』が登場しますね。(カンブリア紀)
カンブリア紀の意味①生殖過程への適応圧力
http://www.rui.jp/ruinet.html?i=200&c=400&m=29753
植物の外圧は、自然圧力>種間圧力
動物の外圧は、カンブリア紀以降、種間圧力>自然圧力
以上のようになると思います。