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2010年05月27日

『次代を担う、エネルギー・資源』トリウム原子力発電9~再処理は実用の域に達しているのか?

>では、図の最後でも書いたように、プルトニウムを取り出すのは、MOX燃料としてプルサーマル利用するためのもののようですが、現在“再処理”技術は、実用の域に達しているのでしょうか? 『次代を担う、エネルギー・資源』トリウム原子力発電8~“再処理”とはどういうことなのか?~


前回に引き続き、今回は“再処理”技術は実用の域に達しているのかどうかを見ていきながら、巷を騒がせている、もんじゅ(高速増殖炉)やプルサーマルと再処理との関係は一体どういったものなのかを見ていきたいと思います。




それでは、見ていきましょう m049


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☆☆☆再処理技術は実用の域に達しているのか?


☆再処理技術には大きく2段階の技術格差がある

前回の記事で、再処理は“プルトニウムを取り出す技術”だと分かりましたが、実はその技術には大きく、2つの段階があります。

1つめは、『天然ウラン』を燃料にした原子炉である「ガス冷却炉(マグノックス炉)」の核廃棄物を再処理する技術で、2つめは、『濃縮ウラン』を燃料にした原子炉である「軽水炉」核廃棄物を再処理する技術です。
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「ガス冷却炉(マグノックス炉)」とは1956年にイギリスで世界最初に登場した商用原子炉のことで、現在のような「軽水炉」で使うために必要な“ウラン濃縮(※1)”の技術が無かった以前は、「天然ウラン」を燃料として使用していました。

(参照)※1

>核分裂を起こすウラン235は自然界における存在量は0.7%程度で、残りの99.3%はウラン238という同じウランの仲間ですが、そのままでは核分裂を起こさない物質です。これらの混在物が、核燃料の原料として採掘、精錬された上で、ウラン235を約3%まで濃縮することではじめて、核燃料として使用できるようになります。
『次代を担う、エネルギー・資源』 トリウム原子力発2 核エネルギーを利用した発電システムを概観する2/2

もともと「ガス冷却炉」とは、戦争で使用するための原爆の原料=プルトニウムを生成するための炉を、商業用に転用したものなので、“「ガス冷却炉」からプルトニウムを回収するための再処理”は、戦時中からある程度確立されていたことになります。

また、天然ウラン中には、核分裂を起こす「ウラン235」の比率が少ないので、核分裂の進行度合いは低く、そのため放射線強度も少ないといった特徴があります。

したがって、“「ガス冷却炉」からの使用済み核燃料(核廃棄物)を用いた、再処理技術”は取り扱いが比較的容易なのです。

それに対して、

「ガス冷却炉」よりも経済効率の高い、つまり核反応が大きい「軽水炉」による使用済み核燃料(核廃棄物)の場合、核分裂の進行度合いは高く、その分含まれる放射線強度も多くなるので先のガス冷却炉燃料に比べ、はるかに技術的に難易度が高いのです。

したがって、両者は別の技術的段階に区別せねばなりません。実際、イギリスでは後者を“THORP”と呼び、フランスでは“HAO”と呼び、両者を明確に区別しています。



☆「軽水炉」燃料の再処理技術は非常に難しい →再処理工場では事故が多発
「軽水炉」燃料の再処理技術は非常に難しいため、「軽水炉」を扱っているアメリカでは、ウェストバレー工場が1972年に閉鎖されて以来、商用再処理工場は全く稼動しておらず、再処理せずに、地中埋設するワンスルー方式をとっています。
現在でも再処理を稼動させている、フランスのラアーグ工場と、イギリスのセラフィールド工場は日本からの使用済み核燃料の再処理委託を請け負っていたため、「軽水炉燃料」でも再処理ができるように施設を変更しましたが、それ以降、事故が続出しており、この状況は日本でも変わっていないのです。



再処理工場事故の事例
再処理工場の隠蔽について
六ヶ所村の再処理工場でまた廃液漏れ事故
日本のマスコミが報じない英国セラフィールド核廃棄物再処理工場の放射能汚染
英仏再処理関連ニュースの部屋
原子力資料情報室


つまり、「軽水炉燃料」の再処理工場は、世界的にも、そして2010年になった現代においても未だ、実用の域に達しているとは言い難いのです。



☆☆☆再処理と「プルサーマル」との関係


☆「MOX燃料」とは戦争の事後処理事業

再処理によって使用済み核燃料(放射性核廃棄物)から取り出したプルトニウムと、ウランとを混ぜた「MOX燃料」を、もう一度軽水炉によって使うというのが、いわゆるプルサーマル計画です。
ところが、これは名目上だけで、実際のところは、核不拡散条約以降、原爆利用を防ぐ為に世界中で“プルトニウム単体”では保有できなったため、ウランと混ぜておけば保有しておけるということで、しかたなく「MOX燃料」を作ったのです。


☆「MOX燃料」をもう一度再処理するには約100年程度かかる

プルサーマルは「核燃料サイクル」における重要な位置づけで、プルトニウムを燃料として使用し、ウラン燃料の削減を図ろうというものですが、MOX燃料はウラン(9):プルトニウム(1)の割合で混ぜるので、ウラン資源の1割分の補填にしかなりません。
また、前回通常の使用済み核燃料(=放射性核廃棄物)は再処理する前に「4年間の保存期間」が必要と書きました。

取り出したばかりの核廃棄物は熱をもっているので、4年程度貯蔵プールで熱を冷まして(=核反応を進行させるため)から再処理工程に入ります。
『次代を担う、エネルギー・資源』トリウム原子力発電8~“再処理”とはどういうことなのか?~

ところが、
「MOX燃料」となった燃料を、もう一度軽水炉で使った後、再処理するには、約100年間もの貯蔵期間が必要になるのです。

その間にプルトニウムはどんどん増えていくので、核燃料“サイクル”と呼ぶには時間のオーダーが現実味を帯びていないのです。

出典は核燃料サイクル開発機構(現独立行政法人日本原子力研究開発機構)の2004年度契約業務報告書「プルトニウム利用に関する海外動向の調査(04)」。発行は昨年3月、委託先はアイ・イー・エー・ジャパンとしてある。 ~中略~ その報告書の中に、フランスにおいて使用済MOX燃料は、「約100 年間貯蔵され、その後に再処理するか、再処理しないかの判断を下す」(2001年6月28日発表の国家評価委員会(CNE)の第7回レポートより)とあるのだ ※janjan 2006年記事より引用


☆☆☆再処理と「もんじゅ(高速増殖炉)」との関係

☆高速増殖炉とは?

現在巷で騒がれている「もんじゅ(=高速増殖炉)」でもMOX燃料が使えます。
プルサーマルで使用できるプルトニウム比率よりも多くのプルトニウムを燃料として使用でき、なおかつ使用するプルトニウム239よりも多くのプルトニウム239を核廃棄物として生成するので、“増殖炉”と呼ばれ、燃料生産の観点で注目されています。
ちなみにプルトニウムは一般の軽水炉でも、ウラン238からプルトニウム239は生成されますが、高速増殖炉ではその生成比率が軽水炉と比べて高いという特徴があります。

軽水炉の場合、核分裂を連続的に起こし臨界に達するためには、水を用いて中性子の速度を遅くしなければなりません。このとき遅くなった中性子を「熱中性子」と呼びます。
「熱中性子」だと核分裂性の「ウラン235」に当り、連鎖反応(=臨界)を起こしていきます。


(参考):『次代を担う、エネルギー・資源』トリウム原子力発電4 炉の構造におけるウラン原発炉とトリウム溶融塩炉の比較』

これに対し、
高速増殖炉の場合は、水の代わりに「ナトリウム」を用いて中性子の動きを“高速に保ったまま”にします。この中性子を「高速中性子」と呼び、この「高速中性子」を用いて、燃料となるプルトニウムを増殖させるので“高速増殖炉”と呼ばれています。


☆増殖の原理とは?

「高速中性子」を利用して、燃料中のプルトニウム239に中性子を当て、核分裂が起きる一方、飛び出した他の「高速中性子」が、炉内のウラン238に吸収され、プルトニウム239に変化します。
この時、ウラン238がプルトニウム239に変化する割合が、初めに入れたプルトニウムの割合より大きくなることで“増殖”させるというのが、増殖の原理です。

(画像はコチラからお借りしました。)

効率よく“増殖”させるには「高速増殖炉」では、軽水炉(熱中性子炉)のように水を冷却・減速材に使用することはできません。
なぜならば、肝心の「高速中性子」が「熱中性子」に変化し、その数が減ってしまうからです。



☆軽水炉よりも高速増殖炉のほうが技術的にはるかに困難

さて、ここで軽水炉に比べて、技術的な「無理」が生じます。

実は、高速増殖炉でも、
核分裂性の燃料になるのは軽水炉と同じく「ウラン235」なので、連鎖反応(=臨界)を続けるには「熱中性子」が必要なのですが、先程述べたように減速材は使えません。

「高速中性子」によって「ウラン235」が核分裂を起こす確立は「熱中性子」に比べて小さいので、その分、核分裂性の燃料(=ウラン235)を多量に炉内につめこんでやらないと、連鎖反応(=臨界)が維持できず、原子炉として成り立たなくなるのです。
そのため、高い効率で“核分裂”と“増殖”を実現させるには、炉内の出力が軽水炉などより、はるかに高くなります。


つまり、「高速増殖炉」とは、軽水炉よりもはるかに高いエネルギーが詰まった高温の原子炉なので、危険度もはるかに増し、制御技術も格段に高度になるのです。


また、「ナトリウム」は腐食性に富む金属であること、しかも水や空気に触れると激しく反応を起こすという特徴があります。
したがって、非常に精密な制御が必要で、1995年のナトリウム漏れ事故から15年、また再開が始まりましたが、連日の報道のとおり、事故が絶えません。しかも、実用するまでにはあと50~100年程かかると言われています。


そもそも、プルトニウムとは、原爆材料であることからもわかるとおり、一箇所に数キログラム以上集中すると、一気に「臨界」に達し、核分裂の連鎖反応を起こしてしまいます。
そんなプルトニウムをエネルギーの非常に高い原子炉内で増殖させるのですから、現在の軽水炉よりも技術的にはるかに高いのは当然で、実現性はかなり少ないと見たほうが良いのではないでしょうか。



☆☆☆再処理技術が確立していないのに、高速増殖炉・プルサーマルは成立しない


☆再処理技術が完成して初めて、高速増殖炉は完成する

軽水炉と同じく、高速増殖炉によって出た核廃棄物の中にもまた、ウランやプルトニウム、その他核分裂生成物(放射性核廃棄物)が多く混在しており、その中から“再処理”によってプルトニウムを取り出さなければなりません。
したがって、再処理技術が確立して初めて、高速増殖炉によるプルトニウム燃料利用が可能になるのです。逆に言うと、高速増殖炉で燃料生産を確立させるには、再処理技術の確立が必要なのです。

高速増殖炉開発の推進という大儀名分があってこそ、再処理事業の推進を正当化することが容易となる。高速増殖炉なしの再処理というのは正当化が極めて困難である。だから芋づる的な因果関係により、高速増殖炉開発もまた、バックエンド政策の破綻を防ぐために、形だけでも継続せざるを得ないのである ※書籍『原子力の社会史/吉岡斉』P277より引用

☆軽水炉の再処理工場は世界でもわずか3箇所しかない(2006年時点)

ところが、先にも記述したとおり、軽水炉燃料の再処理ですら破綻しているのが現実です。

そこには目を向けず、「夢の原子炉」と銘打っては研究費に多額の税金が投入されているのです。
今では日本以外では高速増殖炉の研究は成されておらず、プルサーマルも同様、“再処理”に難があり、ワンスルー処理(=再処理しないで、埋設処理)が世界の主流となっています。
2006年時点では、世界中で再処理工場(軽水炉燃料)として運転しているのは、わずか3箇所しかありません。
(※下表は世界の原子力発電の動向2006を元に作成)




☆☆☆難解な問題(バックエンド問題)は先送りにされる


2回にわけて“再処理”について書いていきましたが、まとめると、


①:再処理とは安全に処理することではなく、核廃棄物の中からプルトニウムを取り出すことであり、その他は埋めるしかないということ


②:軽水炉などの濃縮ウランを用いた核廃棄物から再処理する技術は、非常に困難であり、未だ確立された技術ではないということ


③:プルサーマルや高速増殖炉を実現させるには、再処理技術の確立が絶対条件であること


④:それにもかかわらず、再処理技術は確立されている前提で、これら(プルサーマル、高速増殖炉)の研究が先行されていること


⑤:高速増殖炉は(プルサーマルも基本的には同じ)燃料生産のためであり、最終処分の問題は何も解決していないこと


ということが分かりました。

このようにバックエンド問題(最終処分問題)とは、複雑で技術的にも難点が多いため、問題は先送りされていくという状態が続いています。



これらの問題は政治体制との関係も大きく関っていくことになっていきます。
その点に関しては今後扱っていきたいと思います。



参考資料
●書籍『原子力の社会史/吉岡斉』
●書籍『プルトニウムの恐怖/高木仁三郎』
●書籍『プルサーマルの科学/桜井淳』
「原子力発電環境整備機構(NUMO)ホームページ」
「原子力資料情報室(CNIC)」
再処理と原子力発電の違い、プルサーマルと高速増殖炉
使用済みMOX燃料がネック
河野太郎氏が語る「再処理工場の秘密」(1)~(5)

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comments

原子力って、特に原爆を落とされた日本人からするとやっぱり「危険」という感覚はぬぐえないと思います。

更に、こうやって事実を知ると、やっぱり安全への確信がないまま、技術開発が進められていて可能性を感じられないどころか、恐怖感さえ出てきます。(これでは、家の近くに原発建てるって言われたら反対されるのも当然。)

にも関わらず、エネルギー政策の中でも重点を置かれている。。(なんで~っ?)

何か一方的に強力な力で無理やり推し進められているような気がしてきます。

これからも楽しみにしてますね♪

  • tiger lily☆ 2010年05月28日 10:21

 プルトニウムは地球生命圏に存在してはいけない物質だと私は考えています。
 一方で現場の科学者の取り組みを全て否定する気もないので、オープンな議論と堅実な実証データの蓄積を支持します。
 
 高速中性子を発生するためには、相当量の電力が必要と考えられます。
 また、施設建設やPuの分離や最終処分と低レベル放射能の長期保管・管理など、原子力産業総体で熱量保存則的に二次エネルギーを生産しているのか浪費しているのか真剣に検証して欲しいものです。
 さらに、実験を通じて金属Naの物性特性についても新たな「気付きと発見」をしてもらいたいものです。(これだけ慎重に構造設計しても、想定外の事故が起きるのは、解ってないことがまだある筈です。)
 原子力技術者の出口戦略は、電磁気的に赤外線を収束する方法(マックスウエルの悪魔)の開発で、現在40%台のガスタービン発電機の効率を、60%台に高める方法を考えることです。
 Puはこの技術があれば、極地(超深海や宇宙)での電池や熱源としての有効度が高まります。
 金属Naは優秀なヒートポンプ素材なので、リスク管理も含めて充分研究してください。
 新エネルギーの開発は、温暖化ガス同様に碌なことはなく、地球生命圏に余計な熱源を増やすだけな気がします。

  • ジャギ様 2010年05月28日 21:53

>tiger lily☆さん
コメントありがとうございます☆

私自身、原子力開発の素人なので、一個一個調べていくうちに、だんだんとわかってきたのですが、やはり安全への確信はないのがはっきりわかりました。

>にも関わらず、エネルギー政策の中でも重点を置かれている。。(なんで~っ?)

>何か一方的に強力な力で無理やり推し進められているような気がしてきます。

原子力発電開発の領域には、まさにそういった権力構造があるようです。
今後扱っていく予定ですので期待しておいてください。

  • tutinori 2010年05月31日 21:59

>ジャギ様
コメントありがとうございます。

>現場の科学者の取り組みを全て否定する気もないので、オープンな議論と堅実な実証データの蓄積を支持します。

素人たちで運営し、価値観などをはさまずに、「事実」とは何か?をとことん追求していく中で、可能性を見出していくことをコンセプトにしていますので、そのような評価をいただき大変光栄に思います。

>また、施設建設やPuの分離や最終処分と低レベル放射能の長期保管・管理など、原子力産業総体で熱量保存則的に二次エネルギーを生産しているのか浪費しているのか真剣に検証して欲しいものです。

ジャギ様のおっしゃる、『熱量保存則的な二次エネルギー』というのが、核分裂におけるエネルギー(=E=mc^2)の範疇に入るのかどうかさえわからないのですが、(なにせ素人なので^^;)おそらく浪費しているのではないでしょうかね。
数値的な検証はする必要はあると思ってますので、何かヒントになるような資料などあったら紹介していただきたいです。
今後も参考になる視点やご意見など、コメント宜しくおねがいします。

  • tutinori 2010年05月31日 22:22
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